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第1編 病理学の基礎

第1章 病理学とは

病理学とは、病気の原因やその成り立ちを明らかにする学問である。その意義としては、病気の原因や成り立ちを明らかにすることで、その病気を「治療」したり、「予防」したりできることである。

あん摩や鍼灸を行う者にとって、病理学の意義とは、患者さんの疾病についてその原因や機序を説明したり、あん摩や鍼灸治療の目的を説明したりできることにある。

第2章 疾病の意義と分類

第1節 健康・疾患および半健康状態

1 健康

「健康」を医学的に定義すると、生体の内部環境が一定に保たれている状態であるという。内部環境とは、体内の環境を指し、脈拍や呼吸・体温・血圧などをいう。

脈拍や呼吸は、ホルモンや神経によって一定に保たれている。このような内部環境を一定に保とうとするはたらきを、ホメオスターシス(恒常性保持機能)という。

2 疾病

「病気」を医学的な用語でいうと、「疾病」という。疾病とは、生体の恒常性が崩れ、自覚的・他覚的に異常な変化(症状)が現れている状態である。

疾病によって症状が現れることを発症という。私たちは発症によって疾病にかかったことに気付くことが多い。

3 半健康状態

半健康状態とは、健康と疾病の中間の状態をいう。この時期は頭痛・倦怠感などの不定愁訴のみが現れる。半健康状態は、西洋医学では疾病として扱われにくいが、東洋医学では「未病」として治療対象とされる。

第2節 疾病の分類

1 先天性疾患と後天性疾患

  1. 先天性疾患:出生前に罹患した疾患。奇形、遺伝性疾患(色盲・血友病)などがある。
  2. 後天性疾患:出生後に罹患した疾患。外傷や感染症などがある。

2 全身性疾患と局所性疾患

  1. 全身性疾患:症状が全身に現れる疾患。敗血症、白血病などがある。
  2. 局所性疾患:症状が体の一部にだけ現れる疾患。五十肩、膝関節症、胃潰瘍などがある。

3 器質的疾患と機能的疾患

  1. 器質的疾患:組織・臓器に形態的変化がみられる疾患。変形性関節症、白内障、胃癌などがある。
  2. 機能的疾患:症状はあるが、形態的な変化がみられない疾患。神経症、うつ病、過敏性腸症候群などがある。

4 急性疾患と慢性疾患

  1. 急性疾患:症状が急に現れ、経過が短い疾患。症状は激しい。流行性感冒、急性虫垂炎などがある。
  2. 慢性疾患:症状が徐々に進行し、経過が長い疾患。症状は緩やかである。肺結核症、関節リウマチなどがある。

5 原発症、続発症、合併症

ある疾患に罹患し、それが原因で次の疾患にかかった場合、原因となった疾患を原発症、それによって起こった疾患を続発症という。

溶血性連鎖球菌感染により扁桃炎が起こった後、急性糸球体腎炎が起こる。扁桃炎が原発症で、腎炎が続発症になる。

これに対し、2つの疾患の間に何の関係もないような場合を合併症という。

6 特発性疾患

原因が明らかでない疾患をいう。本態性疾患とも呼ばれる。特発性側弯症、本態性高血圧症などがある。

7 その他

  1. 小児疾患と老人性疾患
  2. 感染症と非感染症
  3. 遺伝性疾患と非遺伝性疾患

第3章 病変と症候

第1節 病変

病変とは、疾病によって組織や臓器に現れる形態的変化のことである。

病変には、循環障害(うっ血や梗塞)、退行性病変(萎縮や壊死)、進行性病変(肥大や増殖)、炎症、腫瘍などがある。

第2節 症候(症状)

症候とは、疾病によって現れる現象のことであり、症状ともいう。症状は次の3つに分類される。

1 自覚症状 と他覚症状

  1. 自覚症状:患者本人にのみ感じられる症状。他人には分からない。痛みやしびれ、耳鳴りなどがある。
  2. 他覚症状:他人にも分かる症状。種々の検査、顔色の異常、発熱などがある。

2 直接症状と間接症状

  1. 直接症状:病変のある臓器から直接起こる症状。気管支炎の際の咳、大腸炎の際の下痢などがある。
  2. 間接症状:直接症状の結果、二次的に起こる症状。腎炎の際に現れる顔面部の浮腫などがある。

3 一般的症状と特徴的症状

  1. 一般的症状:多くの疾病に共通して現れる症状。頭痛、発熱などがある。
  2. 特徴的症状:特定の疾患にしか現れない症状。疾病を特定する重要な手掛かりになる。麻疹で見られるコプリック斑、線維素性肺炎で見られる錆色の痰などがある。

第4章 経過・予後・転帰

第1節 疾病の経過

疾病が始まってから終わりまでの期間を経過という。

急性熱性感染症(インフルエンザなど)は次のような経過をたどる。

  1. 潜伏期:病原体に感染してから発症するまでの時期。症状はみられない。インフルエンザの潜伏期は1~2日である。
  2. 前駆期:頭痛・だるさ・発熱・食欲不振などの不定愁訴が現れる時期。
  3. 侵襲期:その疾患特有の症状が現れ、病勢が次第に増悪する時期。
  4. 極期:疾病の勢いが最も強く、激しい症状が続く時期。
  5. 消退期:症状が次第に弱まっていく時期。
  6. 回復期:病変や症状が消え、健康な状態に戻る時期。

第2節 予後

予後とは、疾病の終わりを予測することである。予後は次の3つに分けられる。

  1. 予後良:疾病が治癒すると予測されること。
  2. 予後不良:生命の危険もしくは疾病が治らないと予測されること。
  3. 疑予後:予後良か予後不良か判断できないこと。

第3節 転帰

転帰とは、疾病の終わりのことである。転帰には次の3つがある。

  1. 完全治癒(完治):完全に元の健康状態に戻ること。
  2. 不完全治癒(不治):病変や症状が治癒しないこと。
  3. 死:病変が進み、生命現象が停止すること。