循環障害とは、血液の循環が異常な状態である。
循環障害を挙げると、次の8つがある。
(1)充血、(2)うっ血、(3)貧血、(4)出血、(5)血栓症、(6)塞栓症、(7)梗塞、(8)水腫
充血とは、局所の血液量が著しく増加している状態をいう。
また、局所に多くの動脈血が流れ込んでいる状態を動脈性充血といい、充血とは一般的に動脈性充血を指す。
充血はその原因によって次の5つに分けられる。
原因:温熱、寒冷、機械的刺激
原因:交感神経の損傷、星状神経節ブロック
原因:精神的刺激
うっ血とは、静脈血の流れが妨げられ、組織や臓器内に静脈血が留まっている状態をいう。静脈性充血とも呼ばれる。
うっ血はその原因によって、次の4つに分けられる。
原因疾患:腫瘍、妊娠子宮
原因疾患:血栓、塞栓
原因疾患:静脈弁の機能障害、四肢の骨格筋麻痺、呼吸運動の減弱
☆静脈環流を助ける器官:静脈弁、骨格筋(筋ポンプ)、心臓・肺(吸引作用)。
うっ血は長く続くことが多く、うっ血による組織への影響も大きい。うっ血により起こる組織の変化には次のものがある。
貧血とは、赤血球数やヘモグロビン量が減少し、酸素運搬機能が低下した状態である。
貧血には、全身性貧血と局所性貧血(虚血)がある。局所性貧血とは、局所組織や臓器への動脈血の流入が著しく減少または停止した状態をいう。
本章では局所性貧血について取り上げる。
貧血はその原因により、次の6つに分けられる。
原因疾患:腫瘍、腹水
原因疾患:血栓、動脈硬化、バージャー病、結節性多発動脈炎
★バージャー病:四肢末端の血管炎により血管の閉塞が起こる疾患。難病に指定されている。
★結節性多発動脈炎:全身の中小動脈に血管炎を起こし、血管壁に小結節をつくる疾患。
原因疾患:寒冷刺激、薬物
原因疾患:レイノー病
★レイノー病:交感神経が一時的に興奮して四肢末端の細動脈が異常に収縮する疾患。寒冷刺激が引き金となる。持続的に血管が収縮するため、手指は虚血を起こす。その後、うっ血・充血を起こし元に戻る。
原因:強い精神的刺激
原因疾患:脳貧血
貧血が長く続くと、周囲の細胞は栄養障害のために萎縮・変性を生じ、さらに進むと壊死に至る。局所性貧血の影響を最も受けやすいのは脳で、血行停止が5分間続くと、脳の神経細胞は壊死する。
出血とは、血液の全成分が血管外に出ることをいう。実際には、赤血球が血管外に出たことで出血と判断する。
出血は、その原因・部位・大きさにより3つの分け方をする。
血管壁が破れて起こる出血。動脈や静脈にみられる。外傷、血圧の上昇、潰瘍や癌による血管壁の破壊、動脈炎や動脈瘤など血管壁の異常で起こる。
血管壁は破壊されず、血管透過性が高まることで起こる出血。毛細血管や細静脈でみられる。壊血病、酸素欠乏、細菌感染、貧血、血友病、血小板減少症で起こる。
原因疾患:壊血病、貧血、細菌感染、血友病、血小板減少症
★血管透過性:毛細血管壁は扁平上皮の1層構造で、酸素や栄養素は細胞の間のすき間を通って移動する。このすき間が大きくなることを透過性亢進といい、赤血球が血管外に出るまで大きくなると出血を起こす。
血液が体外に流れ出る出血。皮膚からの出血のほか、消化管・気道・尿路など体外に通じる管腔への出血も含まれる。
外出血の部位による分類
組織や体腔内に起こる出血。胸腔内出血(血胸)、腹腔内出血、心嚢内出血などがある。
普通の外出血では、血液が凝固してつくられる血餅により止血する。
大出血により全血液量の3分の1以上を失うと、ショック状態に陥って死亡する。
脳幹部の出血は呼吸中枢や循環中枢が破壊されるため死亡する。
心嚢内の出血でも、心拍動が妨げられ死亡する。
内出血の場合は赤血球が破壊されるが、放出された物質は数日で吸収される。
出血性素質とは、出血しやすかったり、出血するとなかなか止血しないような病態のことである。
出血性素質を持つ疾患は次の3つに分けられる。
ショックとは、末梢循環が障害され、心拍出量が減少し、血圧が低下する状態をいう。血圧の低下により意識を失うことがある。
ショックのうち、循環血液量が減少するものを一次性ショック、心拍出量が減少した結果、循環血液量が減少するものを二次性ショックという。
ショックは原因によって、次の6つに分類される。
心臓や血管内で血液が凝固する現象をいい、血液が凝固したものを血栓という。
血栓を形成する原因には次の3つがある。
原因疾患:下肢静脈瘤、心房細動
原因疾患:動脈硬化、血管炎
原因疾患:播種性血管内凝固(DIC)
血栓の種類には次の3つがある。
血管内に血栓が形成されると血管腔を狭めて血行を阻害する。特に脳や心臓の動脈に血栓が形成されれば、脳梗塞や心筋梗塞の原因となる。
血栓が起こると次のような転帰をたどる。
血液に溶解しない物質を塞栓または栓子といい、栓子が血管内で閉塞して血流を妨げる状態を塞栓症という。
栓子には、以下の5つがある。
塞栓症は塞栓が生じる部位によって閉塞する場所が異なる。
塞栓症は次のような転帰をたどる。
梗塞とは、終動脈が血栓や塞栓によって急速に閉塞し、その末梢領域に完全な酸素欠乏が起こり、組織壊死に陥る病変である。
栄養血管と機能血管が存在する臓器に多くみられる(肺・肝臓・腸)。その他、脾臓・腎蔵・脳に起こる静脈内血栓症、絞扼性腸閉塞、卵巣嚢胞捻転による梗塞がある。
梗塞巣は肉芽組織の増殖により吸収、被包、器質化(線維化)される。
ある血管に狭窄や閉塞が起こった時、別の血管(吻合枝)によって血流が保たれることを側副循環という。腸間膜動脈や大静脈以外の静脈で起こる。
主な側副循環を起こす静脈は次の2つである。
肝硬変などで門脈に通過障害が起こると、血液は次の3つの経路を通って大静脈に流れる。
ア.経路
胃静脈→食道静脈→奇静脈→上大静脈
イ.症状
食道静脈に負担をかけるため、食道静脈瘤を起こし、これが破裂すると吐血しショック死する。
ア.経路
臍周囲の皮静脈→上大静脈または下大静脈
イ.症状
臍周囲の静脈が膨らみ、蛇行する状態を観察することができる。これをメズサの頭といい、肝硬変の診断に用いられる。
ア.経路:下腸間膜静脈→肛門周囲の静脈(痔静脈)→下大静脈
イ.症状:肛門周囲の疼痛や出血を起こすことがある。
毛細血管から血液中の塩類を含んだ水分が漏出し、組織内に溜まったものを組織液という。そして、多量の組織液が組織間隙や体腔内に貯溜した状態を水腫または水症という。
水腫が体腔内に起こったものを腔水症、皮下に起こったものを浮腫、組織間隙に起こったものを狭義の水腫という。
水腫の発生機序をまとめると次の6つがある。
原因疾患:心不全
原因疾患:組織や臓器の萎縮
原因疾患:肝障害、腎障害、栄養不良
原因疾患:炎症
原因疾患:炎症、うっ血の持続
原因疾患:リンパ管の圧迫・閉塞
水腫は原因疾患により、次のように分けられる。
うっ血が持続し、血管内圧が高まることにより起こる。
原因疾患:心不全、肝硬変
腎臓疾患により蛋白尿が続くことで、血漿蛋白(アルブミン)が減少し、血液の膠質浸透圧が低下して起こる。
組織圧の低い眼瞼から浮腫が始まる。
慢性の消耗性疾患(悪性腫瘍)や栄養不良により血漿蛋白が減少し、血液膠質浸透圧が低下して起こる(飢餓浮腫または悪液質性浮腫)。
原因疾患:悪性腫瘍、飢餓
局所の色は蒼白、温度は低下、組織の容積は増大、硬度は減少、弾力性は低下、浮腫の局所を指圧すると圧痕が残る。実質臓器の水腫や腔水症では、水腫の圧迫によって組織や臓器は萎縮し、機能は低下する。
組織液やリンパ液の環流障害は、原因がなくなれば完全に吸収され元に戻るが、長期にわたって水腫が持続すると、線維成分の増加によって線維化や硬化が起こる。
脱水症とは、体内から水分またはナトリウムが減少し、体内の水分平衡が崩れた状態をいう。厳密には循環障害でないが、ここで取り上げる。
高度の脱水症では血圧が低下し、ショックを起こすことがある。体内水分の22%(体重の15%)を失うと死亡することがある。
高度な発汗、発熱、肉体運動などで適当な水分補給が行われない場合に起こる。
この場合、細胞外液の塩分濃度は上昇して高浸透圧になり、細胞内の水が細胞外に移動することで細胞内脱水症を起こす。
細胞内脱水症により、口渇感が起こり、抗利尿ホルモンの分泌が促され、尿量が減少し、水分の喪失を抑えることができる。
体内のナトリウム喪失は、頻回の嘔吐や下痢、大量の発汗に対して、水だけを補給した場合に起こる。
ナトリウムの減少により、細胞外液は低張となり、水分が細胞内へ移動する(細胞浮腫)。
細胞浮腫により、抗利尿ホルモンの分泌は抑制され、尿量は増加し、細胞外液の水分喪失が促進される。やがて血液が濃縮され、血圧低下、ショックを起こす。
二次的脱水症では口渇感が起こりにくく、脱水症に気付かず手遅れになることがある。