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第3編 循環障害

循環障害とは、血液の循環が異常な状態である。

循環障害を挙げると、次の8つがある。

(1)充血、(2)うっ血、(3)貧血、(4)出血、(5)血栓症、(6)塞栓症、(7)梗塞、(8)水腫

第1章 充血

充血とは、局所の血液量が著しく増加している状態をいう。

また、局所に多くの動脈血が流れ込んでいる状態を動脈性充血といい、充血とは一般的に動脈性充血を指す。

第1節 充血の分類

充血はその原因によって次の5つに分けられる。

  1. 機能性(生理的)充血:生理的に機能が高まっている組織や臓器に起こる充血。運動時の筋や、食後の消化管に起こる。これは組織に栄養や酸素を供給するための正常な反応である。
  2. 筋麻痺性充血:動脈の平滑筋が麻痺することで起こる充血。動脈壁の筋が温熱・寒冷・機械的刺激などを受けて弛緩し、動脈が拡張して起こる。

    原因:温熱、寒冷、機械的刺激

  3. 神経性充血:血管収縮神経(交感神経)の麻痺や血管拡張神経の興奮により、動脈が拡張して起こる充血。

    原因:交感神経の損傷、星状神経節ブロック

  4. 反射性充血:強い精神的刺激(恥じらいや怒り)により、血管拡張神経が興奮するために起こる充血。

    原因:精神的刺激

  5. 炎症性充血:炎症によって起こる充血。炎症に伴って放出される化学物質(ヒスタミン)の作用により血管が拡張して起こる。

第2節 充血の徴候

第2章 うっ血

うっ血とは、静脈血の流れが妨げられ、組織や臓器内に静脈血が留まっている状態をいう。静脈性充血とも呼ばれる。

第1節 うっ血の分類

うっ血はその原因によって、次の4つに分けられる。

  1. 圧迫性うっ血:静脈が外から圧迫されて起こるうっ血。

    原因疾患:腫瘍、妊娠子宮

  2. 閉塞性うっ血:静脈内腔が狭窄または閉塞して起こるうっ血。

    原因疾患:血栓、塞栓

  3. 心機能障害によるうっ血:心臓の機能が低下し、静脈血を心房に戻すことが不十分となって起こるうっ血。
  4. 血流補助器官の障害によるうっ血:静脈血の還流を助ける器官の障害によって起こるうっ血。

    原因疾患:静脈弁の機能障害、四肢の骨格筋麻痺、呼吸運動の減弱

    ☆静脈環流を助ける器官:静脈弁、骨格筋(筋ポンプ)、心臓・肺(吸引作用)。

第2節 うっ血の徴候

第3節 うっ血の結果

うっ血は長く続くことが多く、うっ血による組織への影響も大きい。うっ血により起こる組織の変化には次のものがある。

  1. うっ血性水腫:うっ血により静脈圧や毛細血管内圧が上昇し、血管壁の透過性が高まる。すると血液中の水分が周囲の組織内に漏出し、水腫や浮腫を起こす。門脈うっ血では腹水、心機能低下では下肢の浮腫が起こる。
  2. 組織や臓器の機能障害:静脈血が組織内に留まることで、栄養素や酸素の供給障害が起こる。
  3. 静脈管の変形:静脈内圧の上昇により、静脈管の拡張症や静脈瘤を生じる。

第3章 貧血

貧血とは、赤血球数やヘモグロビン量が減少し、酸素運搬機能が低下した状態である。

貧血には、全身性貧血と局所性貧血(虚血)がある。局所性貧血とは、局所組織や臓器への動脈血の流入が著しく減少または停止した状態をいう。

本章では局所性貧血について取り上げる。

第1節 貧血の分類

貧血はその原因により、次の6つに分けられる。

  1. 圧迫性貧血:動脈が外から圧迫されて起こる貧血。

    原因疾患:腫瘍、腹水

  2. 閉塞性貧血:血管内腔が狭窄することで起こる貧血。

    原因疾患:血栓、動脈硬化、バージャー病、結節性多発動脈炎

    ★バージャー病:四肢末端の血管炎により血管の閉塞が起こる疾患。難病に指定されている。

    ★結節性多発動脈炎:全身の中小動脈に血管炎を起こし、血管壁に小結節をつくる疾患。

  3. 筋痙攣性貧血:血管壁が収縮して起こる貧血。

    原因疾患:寒冷刺激、薬物

  4. 神経性貧血:血管収縮神経が異常に興奮し、血管が収縮することで起こる貧血。

    原因疾患:レイノー病

    ★レイノー病:交感神経が一時的に興奮して四肢末端の細動脈が異常に収縮する疾患。寒冷刺激が引き金となる。持続的に血管が収縮するため、手指は虚血を起こす。その後、うっ血・充血を起こし元に戻る。

  5. 反射性貧血:強い精神的刺激(恐怖や不安、激しい痛み)により反射的に血管が収縮して起こる貧血。

    原因:強い精神的刺激

  6. 代償性貧血:局所の急激な充血により、他の部分に起こる貧血。腹水の急激な穿刺吸引による脳貧血がある。

    原因疾患:脳貧血

第2節 貧血の徴候

第3節 貧血の結果

貧血が長く続くと、周囲の細胞は栄養障害のために萎縮・変性を生じ、さらに進むと壊死に至る。局所性貧血の影響を最も受けやすいのは脳で、血行停止が5分間続くと、脳の神経細胞は壊死する。

第4章 出血

出血とは、血液の全成分が血管外に出ることをいう。実際には、赤血球が血管外に出たことで出血と判断する。

第1節 出血の分類

出血は、その原因・部位・大きさにより3つの分け方をする。

1 出血の原因による分類

  1. 破綻性出血

    血管壁が破れて起こる出血。動脈や静脈にみられる。外傷、血圧の上昇、潰瘍や癌による血管壁の破壊、動脈炎や動脈瘤など血管壁の異常で起こる。

  2. 漏出性出血

    血管壁は破壊されず、血管透過性が高まることで起こる出血。毛細血管や細静脈でみられる。壊血病、酸素欠乏、細菌感染、貧血、血友病、血小板減少症で起こる。

    原因疾患:壊血病、貧血、細菌感染、血友病、血小板減少症

    ★血管透過性:毛細血管壁は扁平上皮の1層構造で、酸素や栄養素は細胞の間のすき間を通って移動する。このすき間が大きくなることを透過性亢進といい、赤血球が血管外に出るまで大きくなると出血を起こす。

2 出血部位による分類

  1. 外出血

    血液が体外に流れ出る出血。皮膚からの出血のほか、消化管・気道・尿路など体外に通じる管腔への出血も含まれる。

    外出血の部位による分類

  2. 内出血

    組織や体腔内に起こる出血。胸腔内出血(血胸)、腹腔内出血、心嚢内出血などがある。

3 出血の大きさによる分類

  1. 点状出血:毛細血管からの出血。
  2. 斑状出血:直径3mmを越える出血。
  3. 紫斑:小出血斑が数多くみられるもの。
  4. 血腫:出血した血液が集まって腫瘤のようになったもの。体腔内出血でみられる。

第2節 出血の結果

普通の外出血では、血液が凝固してつくられる血餅により止血する。

大出血により全血液量の3分の1以上を失うと、ショック状態に陥って死亡する。

脳幹部の出血は呼吸中枢や循環中枢が破壊されるため死亡する。

心嚢内の出血でも、心拍動が妨げられ死亡する。

内出血の場合は赤血球が破壊されるが、放出された物質は数日で吸収される。

第3節 出血性素質

出血性素質とは、出血しやすかったり、出血するとなかなか止血しないような病態のことである。

出血性素質を持つ疾患は次の3つに分けられる。

  1. 血小板の異常によるもの:血小板減少症(ウェルホーフ紫斑病)
  2. 血管壁の異常によるもの:壊血病
  3. 凝固因子の異常によるもの:血友病、肝疾患、ビタミンK欠乏症

第4節 ショック

ショックとは、末梢循環が障害され、心拍出量が減少し、血圧が低下する状態をいう。血圧の低下により意識を失うことがある。

ショックのうち、循環血液量が減少するものを一次性ショック、心拍出量が減少した結果、循環血液量が減少するものを二次性ショックという。

ショックは原因によって、次の6つに分類される。

  1. 出血性ショック:大量の出血によって起こるもの。
  2. 外傷性ショック:出血や強い痛みによって起こる。
  3. 心原性ショック:心臓疾患により、循環が停滞して起こる。
  4. 熱傷性ショック:出血により血漿成分が失われる。
  5. 細菌性ショック:細菌が産生するエンドトキシンによって、播種性血管内凝固を引き起こして起こる。
  6. アナフィラキシーショック:過剰なアレルギー反応で、大量のヒスタミンが放出され末梢血管の透過性が亢進して起こる。

第5章 血栓症

心臓や血管内で血液が凝固する現象をいい、血液が凝固したものを血栓という。

第1節 血栓形成の誘因

    血栓を形成する原因には次の3つがある。

  1. 血流の変化:血流が非常に緩やかになったり、停止したりして血栓が形成されるもの。

    原因疾患:下肢静脈瘤、心房細動

  2. 血管壁の変化:血管内壁が障害され血栓が形成されるもの。

    原因疾患:動脈硬化、血管炎

  3. 血液性状の変化:播種性血管内凝固(DIC)により起こる。播種性血管内凝固とは、組織や細胞の壊死により血液凝固因子が活性化され、全身の細小血管に血栓を形成する状態である。

    原因疾患:播種性血管内凝固(DIC)

第2節 血栓の種類

血栓の種類には次の3つがある。

  1. 析出血栓(白色血栓):血栓形成の初期に見られ、血小板と線維素(フィブリン)からなる血栓である。血小板が血管壁に付着することで血液凝固因子を放出し、線維素が付着して起こる。
  2. 凝固血栓(赤色血栓):血栓形成の末期にみられ、析出血栓に赤血球が付着して起こる。
  3. 混合血栓:析出血栓と凝固血栓とが交互に層を成している。

第3節 血栓の影響

血管内に血栓が形成されると血管腔を狭めて血行を阻害する。特に脳や心臓の動脈に血栓が形成されれば、脳梗塞や心筋梗塞の原因となる。

第4節 血栓の転帰

血栓が起こると次のような転帰をたどる。

  1. 器質化:血栓が付着する血管壁から毛細血管が侵入し、肉芽組織ができる。肉芽組織は血栓を結合組織に置き換える。これは血栓が血管壁から離れて塞栓症をおこすのを防ぐためである。
  2. 再疎通:血栓内に進入した毛細血管はやがて本来の血管となり、不十分ながら血流が再開する。
  3. 融解・塞栓化:血栓が部分的に融解し、血管壁から離れて血管内を流れ、別の場所で塞栓症を起こす。

第6章 塞栓症

血液に溶解しない物質を塞栓または栓子といい、栓子が血管内で閉塞して血流を妨げる状態を塞栓症という。

第1節 栓子の種類

栓子には、以下の5つがある。

  1. 血栓:血栓が血管壁から剥離して起こる。塞栓の原因で最も多い。
  2. 腫瘍:腫瘍組織の断片が塞栓となる。
  3. 脂肪:外傷や外科手術により、皮下の脂肪組織が挫滅して起こる。
  4. 骨髄:骨折によって挫滅した骨髄組織により起こる。脂肪塞栓と合併することが多い。
  5. 空気:外傷によって静脈中に入った空気や、潜函病によって血液中に生じた窒素の気泡によって起こる。

第2節 塞栓症の分類

塞栓症は塞栓が生じる部位によって閉塞する場所が異なる。

  1. 動脈内塞栓症:左心弁膜や動脈内に生じた血栓は、腎臓・脳・下肢など全身の末梢動脈で塞栓症を起こす。
  2. 静脈内塞栓症:静脈内に生じた血栓は、心臓を経て肺動脈の末梢で塞栓症を起こす。
  3. その他:逆行性塞栓症は静脈内の栓子が静脈を逆流し、上流の狭い部分で塞栓を起こす。交叉性塞栓症(奇異塞栓症)は左右心房間の卵円孔が開存している場合に起こり、静脈に生じた血栓が右心房から左心房を通って動脈内塞栓症を起こす。

第3節 塞栓症の転帰

塞栓症は次のような転帰をたどる。

  1. 梗塞:塞栓によって閉塞した血管の末梢領域には貧血が起こる。終動脈が閉塞した場合に梗塞が起こり、末梢領域の組織は壊死する。
  2. 膿血症:栓子が病原微生物を含んでいる場合は、微生物が転移する。
  3. 転移:腫瘍細胞は塞栓中で増殖し、血管外に出て腫瘍の転移巣を形成する。門脈域の消化管腫瘍は肝臓へ、大循環系内臓腫瘍は肺に転移しやすい。
  4. その他:塞栓が空気やガスの場合、大量になると肺循環を妨げて死亡する。

第7章 梗塞

梗塞とは、終動脈が血栓や塞栓によって急速に閉塞し、その末梢領域に完全な酸素欠乏が起こり、組織壊死に陥る病変である。

第1節 梗塞の種類

  1. 貧血性梗塞(白色梗塞):梗塞巣の組織が貧血状態となり、灰白色の凝固壊死を起こす。心筋梗塞、脳梗塞、腎梗塞でみられる。
  2. 出血性梗塞(赤色梗塞):梗塞巣の組織に血液が流れ込み赤く見えるもの。

    栄養血管と機能血管が存在する臓器に多くみられる(肺・肝臓・腸)。その他、脾臓・腎蔵・脳に起こる静脈内血栓症、絞扼性腸閉塞、卵巣嚢胞捻転による梗塞がある。

第2節 梗塞の転帰

梗塞巣は肉芽組織の増殖により吸収、被包、器質化(線維化)される。

第3節 側副循環(傍側循環)

ある血管に狭窄や閉塞が起こった時、別の血管(吻合枝)によって血流が保たれることを側副循環という。腸間膜動脈や大静脈以外の静脈で起こる。

主な側副循環を起こす静脈は次の2つである。

    1 下大静脈

    1. 原因:腹水、腹部や骨盤腔の腫瘍、妊娠子宮などによって下大静脈が圧迫された時にみられる。
    2. 経路:下肢の静脈→外腸骨静脈→側腹部・側胸部の皮静脈→腋窩静脈→上大静脈

    2 門脈

    肝硬変などで門脈に通過障害が起こると、血液は次の3つの経路を通って大静脈に流れる。

    (1)食道下部に向かうもの

    ア.経路

    胃静脈→食道静脈→奇静脈→上大静脈

    イ.症状

    食道静脈に負担をかけるため、食道静脈瘤を起こし、これが破裂すると吐血しショック死する。

    (2)臍周囲に向かうもの

    ア.経路

    臍周囲の皮静脈→上大静脈または下大静脈

    イ.症状

    臍周囲の静脈が膨らみ、蛇行する状態を観察することができる。これをメズサの頭といい、肝硬変の診断に用いられる。

    (3)肛門周囲に向かうもの

    ア.経路:下腸間膜静脈→肛門周囲の静脈(痔静脈)→下大静脈

    イ.症状:肛門周囲の疼痛や出血を起こすことがある。

    第8章 水腫

    毛細血管から血液中の塩類を含んだ水分が漏出し、組織内に溜まったものを組織液という。そして、多量の組織液が組織間隙や体腔内に貯溜した状態を水腫または水症という。

    水腫が体腔内に起こったものを腔水症、皮下に起こったものを浮腫、組織間隙に起こったものを狭義の水腫という。

    第1節 水腫の発生機序

    水腫の発生機序をまとめると次の6つがある。

    1. 毛細血管内圧の上昇:充血やうっ血によって、毛細血管に血液が充満して起こる。

      原因疾患:心不全

    2. 組織圧の低下:組織や臓器の萎縮によって、その間隙に組織液が溜まって起こる。

      原因疾患:組織や臓器の萎縮

    3. 血液膠質浸透圧の低下:血漿蛋白(アルブミン)が減少することによって、血漿膠質浸透圧が低下し、組織液が血管内に再吸収できなくなり起こる。

      原因疾患:肝障害、腎障害、栄養不良

    4. 組織の膠質浸透圧の上昇:炎症によって組織の膠質浸透圧が高くなり、毛細血管からの滲出が促進されて起こる。

      原因疾患:炎症

    5. 毛細血管壁の透過性亢進:炎症やうっ血の持続により毛細血管壁の透過性が高まり、血液成分の漏出が促進されて起こる。

      原因疾患:炎症、うっ血の持続

    6. リンパの還流障害:リンパ管の圧迫・閉塞などによりリンパの流れが妨げられ、その上流で組織液が貯溜することで起こる。

      原因疾患:リンパ管の圧迫・閉塞

    第2節 水腫の分類

    水腫は原因疾患により、次のように分けられる。

    1. うっ血性水腫

      うっ血が持続し、血管内圧が高まることにより起こる。

      原因疾患:心不全、肝硬変

    2. 腎臓性水腫

      腎臓疾患により蛋白尿が続くことで、血漿蛋白(アルブミン)が減少し、血液の膠質浸透圧が低下して起こる。

      組織圧の低い眼瞼から浮腫が始まる。

    3. 消耗性水腫

      慢性の消耗性疾患(悪性腫瘍)や栄養不良により血漿蛋白が減少し、血液膠質浸透圧が低下して起こる(飢餓浮腫または悪液質性浮腫)。

      原因疾患:悪性腫瘍、飢餓

    4. その他
      1. 血管神経性水腫:血管運動神経の機能異常により局所の充血が起こり、血管内圧が上昇して起こる(充血性水腫)。クインケ浮腫・帯状疱疹の水疱などがある。
      2. 補腔性水腫:組織の萎縮により組織圧が低下して起こる。
      3. リンパ還流障害性水腫:リンパの流れが妨げられて起こる。乳癌の治療で、腋窩リンパ節切除後上肢にみられる浮腫がある。
      4. 化学性水腫:細菌毒素・昆虫毒などの作用により、血管透過性が高まって起こる。虫刺されの水疱などがある。
      5. 内分泌性水腫:ホルモンの異常により起こる。甲状腺機能低下による粘液水腫がある。
      6. 炎症性水腫:炎症による充血や血管透過性の亢進により起こる。胸膜炎や腹膜炎の際の胸水・腹水がある。

    第3節 水腫の徴候と結果

    局所の色は蒼白、温度は低下、組織の容積は増大、硬度は減少、弾力性は低下、浮腫の局所を指圧すると圧痕が残る。実質臓器の水腫や腔水症では、水腫の圧迫によって組織や臓器は萎縮し、機能は低下する。

    組織液やリンパ液の環流障害は、原因がなくなれば完全に吸収され元に戻るが、長期にわたって水腫が持続すると、線維成分の増加によって線維化や硬化が起こる。

    第9章 脱水症

    脱水症とは、体内から水分またはナトリウムが減少し、体内の水分平衡が崩れた状態をいう。厳密には循環障害でないが、ここで取り上げる。

    高度の脱水症では血圧が低下し、ショックを起こすことがある。体内水分の22%(体重の15%)を失うと死亡することがある。

    第1節 水分減少による脱水症(一次的脱水症)

    高度な発汗、発熱、肉体運動などで適当な水分補給が行われない場合に起こる。

    この場合、細胞外液の塩分濃度は上昇して高浸透圧になり、細胞内の水が細胞外に移動することで細胞内脱水症を起こす。

    細胞内脱水症により、口渇感が起こり、抗利尿ホルモンの分泌が促され、尿量が減少し、水分の喪失を抑えることができる。

    第2節 ナトリウム欠乏による脱水症(二次的脱水症)

    体内のナトリウム喪失は、頻回の嘔吐や下痢、大量の発汗に対して、水だけを補給した場合に起こる。

    ナトリウムの減少により、細胞外液は低張となり、水分が細胞内へ移動する(細胞浮腫)。

    細胞浮腫により、抗利尿ホルモンの分泌は抑制され、尿量は増加し、細胞外液の水分喪失が促進される。やがて血液が濃縮され、血圧低下、ショックを起こす。

    二次的脱水症では口渇感が起こりにくく、脱水症に気付かず手遅れになることがある。