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第5編 進行性病変

進行性病変とは、組織や臓器が障害された後、機能を回復しようとする反応である。

その種類は次の5つである。(1)肥大・増殖(2)再生・化生(3)移植(4)創傷の治癒(5)異物の処理

第1章 肥大・増殖

第1節 定義

  1. 肥大:細胞の容積が増す
  2. 増殖:細胞の数が増す

第2節 種類

1 肥大の種類

  1. 労動性(機能性):生理的に起こるもの。
  2. 代償性:低下した組織の機能を補う(代償する)もの。腎臓移植後のドナーでは、摘出されずに残った腎臓に肥大が起こる。

    例:腎臓移植後のドナー、肝移植

  3. 刺激性:繰り返し刺激を与えることで起こるもの。

    例:たこ

  4. 内分泌性(ホルモン性):内分泌腺の異常で起こるもの。
  5. 退縮不全性:正常では萎縮する組織が萎縮しないで残るもの。胸腺・リンパ体質では、思春期以降にも胸腺が萎縮しない。

    例:胸腺

  6. 再生性:再生が正常な範囲を超えて起こったもの。

    例:贅骨、切断神経腫

  7. 特発性:原因不明のもの。

    例:魚鱗癬

2 増殖を起こす疾患

  1. 多血球症:酸素不足のため、赤血球が増殖する。
  2. 感染症・炎症:異物を排除するため、白血球が増殖する。
  3. 甲状腺過形成:ヨード欠乏みられる。
  4. 膵島過形成:糖尿病の母親から生まれた子どもにみられる。胎児期に高血糖の環境にさらされるために起こる。
  5. 前立腺肥大:前立腺の良性腫瘍。「肥大」と書くが増殖。

    第2章 再生・化生

    第1節 定義

    1. 再生:組織の欠損を同じ組織の増殖によって修復する反応。
    2. 化生:別の組織が増殖する可逆的な反応。環境の変化への適応反応であるが、癌の発生要因とも考えられている。

      ★化生する組織の種類は、上皮組織・結合組織なと同じ組織の種類内での反応である。

      ア.直接化生:細胞分裂を伴わない化生。

      イ.間接化生:細胞の分裂、増殖を伴う化生。

    第2節 再生の法則

    1. 再生力強い:下等動物(単細胞)、下等組織(上皮・結合)、若い動物
    2. 再生力弱い:高等動物(多細胞)、高等組織(筋・神経)、高齢の動物

    第3節 再生方法の分類

    再生の方法は次の3とおりである。

    1. 生理的に芽細胞が存在:常に芽細胞が作られ、常に再生(増殖)する。

      例:表皮、粘膜、骨髄、精子

      ★芽細胞:細胞の子ども。増殖力が盛んである。

    2. 欠損時に芽組織が新生:欠損すると芽細胞が作られ、再生する。

      例:結合組織

    3. 欠損部から組織が延長する:芽細胞による再生ではなく、欠損部の細胞が増殖する。

      例:神経線維、毛細血管、横紋筋

    第4節 各組織の再生力

    1. 再生力強い:上皮、結合、神経(神経細胞を除く)
    2. 再生力弱い:横紋筋、平滑筋、神経細胞
    3. 再生しない:心筋

    第3章 移植

    第1節 定義

    臓器や組織の一部を他の場所や別の体に移し替えること。

    第2節 臓器移植に関する用語

    臓器の提供者:ドナー

    移植の受容者;レシピエント、宿主

    移植する臓器;グラフト、移植片

    第3節 移植の種類

    1. 自己移植(自家移植)

      移植片と宿主の関係:同じ個体内

      移植の成功率:高い

    2. 同系移植

      移植片と宿主の関係:一卵性双生児間

      移植の成功率:高い

    3. 異系移植

      移植片と宿主の関係:一卵性双生児以外の人

      移植の成功率:低い

    4. 異種移植

      移植片と宿主の関係:別の動物

      移植の成功率:最も低い

    第4節 拒絶反応

    1 定義

    移植の後、宿主の免疫細胞が移植片を排除しようとする反応。

    2 HLA抗原

    免疫反応において、自己の細胞であることを示す物質、マーカー。核を持つ細胞の表面にはHLA抗原が存在し、固体内の各細胞は同じ型の抗原を持っている。一卵性双生児のHLA抗原は同じ型である。

    白血球は自己と同じ型の抗原を持つ細胞を攻撃しないが、型が異なる細胞は異物とみなし、排除しようとする。拒絶反応が起こるのはこのためであり、移植の際はこれを防ぐために免疫抑制剤を投与する。

    また、臓器移植では拒絶反応を防ぐため、HLA抗原がなるべく近い人をドナーに選ぶ。

    拒絶反応の予防:HLA抗原が同じドナーを選ぶ、免疫抑制剤の投与

    3 移植片対宿主反応(GVH反応)

    移植された臓器に含まれるリンパ球が、宿主を攻撃する反応。特殊な拒絶反応である。骨髄移植で起こりやすい。

    例:骨髄移植

    第4章 創傷の治癒

    創傷(切り傷など)は損傷の程度により傷痕を残して治癒する場合がある。 創傷の治癒に関与する組織が肉芽組織である。

    第1節 肉芽組織

    1 定義

    異物を排除し、組織が欠損した部分を修復する組織。傷口にできる赤く盛り上がった柔らかい組織のことである。

    2 構成

    1. 遊走細胞:白血球や貪食細胞のこと。異物(細菌など)を排除する。
    2. 毛細血管:損傷部に栄養を供給する。
    3. 線維芽細胞:若い結合組織。組織の損傷部を修復する。

    3 治癒の過程

    1. 遊走細胞が異物を排除する。
    2. 毛細血管が増殖し、損傷部に栄養を供給する。
    3. 線維芽細胞が増殖し、損傷部を覆う。
    4. 瘢痕化:線維芽細胞が膠原線維(硬い組織)を含んだ結合組織に変化する。これを瘢痕という。液体成分や遊走細胞が消失するため、組織は縮む。

    4 創傷治癒の種類

    1. 第一次治癒(直接治癒・外科的治癒):傷痕を残さない治癒。傷口が開いておらず、肉芽組織の増殖もごく僅かで、細菌感染がない場合にみられる。外科手術の跡でみられる。
    2. 第二次治癒(間接治癒・肉芽形成治癒):傷痕(瘢痕)を残す治癒。傷口が開いていて、肉芽組織の増殖が多く、細菌感染がある場合にみられる。複雑な傷や深い熱傷でみられる。

    第5章 異物の処理

    第1節 異物の定義

    異物とは、人体にとって不要な物質のことをいう。これには、細菌・金属片など体外から侵入したものや、血栓・壊死組織など体内で発生したものがある。

    第2節 処理方法の種類

    1 排除

    1. 吸収:水に溶けて吸収される。

      例:水に溶けやすいもの

    2. 貪食:貪食細胞(好中球やマクロファージ)により貪食・消化される。

      例:細菌、炭粉など。

    3. 融解:白血球から出る酵素により、融解・吸収される。

      例:壊死組織

    2 器質化

    肉芽組織が異物(血栓)の周囲を覆い、融解・吸収する。その後、瘢痕組織に置き換える。器質化により、血栓は固定された状態で処理されるため、梗塞を防ぐことができる。

    例:血栓、大きな壊死組織

    3 被包

    異物の周囲を肉芽組織が覆い、異物を固定する。器質化によって融解・吸収できない異物に対して行われる。

    例:縫合糸、石綿、金属