炎症とは、有害刺激に対する局所組織の防御反応である。風邪を引くとのどが赤く腫れ上がり、痛みが起こる。これはのどに感染が起こったことを知らせ、治癒を促すための反応といえる。
しかし、激しい炎症や慢性の炎症は、激しい痛みを起こし、身体の機能を著しく低下させる。このような過剰な炎症は疾病として捉えることができる。
炎症を起こす疾患には、皮膚炎・腱鞘炎・肝炎と「炎」の付く疾患の他に、虫刺され・熱傷・捻挫・蓄膿・結核などもある。
炎症の原因となるものを催炎体または起炎体という。生体にとって有害なものはすべて催炎体である。
炎症は次の3つの過程をたどる。その過程でさまざまな病変を起こす。
催炎体の障害作用により、組織細胞が変性や壊死を起こすこと。炎症の初期にみられる。
循環障害と滲出は、炎症性充血と滲出の2つの過程からなる。
この反応は、障害組織に血漿成分や白血球を集めるための反応である。炎症の病変の中で、最も重要である。
皮膚に炎症が起こると赤く腫れ上がるが、これは充血によるものである。これを炎症性充血という。
炎症性充血は次の2つの過程からなる。
炎症性充血を起こす物質。
起炎因子には次の4つがある。
ヒスタミン・セロトニンは肥満細胞から放出され、ブラジキニン・プロスタグランジンは障害された細胞から放出される。また、上記の起炎因子はすべて発痛物質でもある。
滲出とは、炎症によって血漿成分が血管外に流出することをいう。
起炎因子の作用や炎症性充血により、毛細血管の透過性が亢進することで起こる。
☆漏出との違い:漏出のうち、炎症により血漿成分が出るものを滲出という。
血漿成分の滲出は、分子の小さいものから起こる。血漿蛋白ではアルブミン、グロブリン、フィブリノゲンの順に滲出する。
滲出により血管外に流出した物質を滲出物(液体であれば滲出液)という。血漿蛋白が組織液に混じると組織液の浸透圧が高まり、水腫が起こる(炎症性水腫)。
原因:水腫など
成分:水
原因:炎症
成分:血漿成分
滲出により組織中に出た白血球は、障害組織に遊走し、異物を貪食・融解する。炎症局所に遊走した白血球を炎症細胞という。その主体は通常、好中球である。
滲出した血漿成分と炎症細胞のはたらきは次のとおりである。
破壊された組織の破片や死滅した白血球など、異物となったものを処理し、破壊された部分を修復する過程である。組織の増殖の主体となるのは肉芽組織である。
炎症は、急性期・亜急性期・亜慢性期・慢性期・治癒期の順に経過をたどる。しかし、炎症は病原体の攻撃と生体の防御との戦いであり、一定の経過をたどらないのが普通である。大まかに考えて、滲出は急性期、組織の増殖は慢性期と捉えてよい。
☆炎症の経過のまとめ
急性期:滲出
慢性期:組織の増殖
急性期で増殖する白血球:好中球
慢性期で増殖する白血球:リンパ球
炎症は主体となっている過程(病変)により、次の4つに分類される。(1)変質性炎(2)滲出性炎(3)増殖性炎(4)特異性炎
変性や壊死など、組織破壊が強く現れる炎症。心筋、肝臓、腎尿細管などの実質臓器にみられることが多いので、実質性炎ともいわれる。
例:劇症肝炎、ジフテリアによる心筋炎
滲出反応が強く現れる炎症。滲出物の種類により5つに分類される。
血清(血球と凝固因子を除いたもの)の滲出が起こる炎症。
例:一般的な炎症、カタル、コレラ
☆カタル:粘液と漿液が流れ出ること。粘膜面に漿液性炎が起こったもの。
フィブリノゲンの滲出が起こる炎症。
例:「線維素」が付くもの、大葉性肺炎、ジフテリアの偽膜形成
滲出物中に多量の好中球を含み、膿となる炎症。原因菌として、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎双球菌、淋菌、緑膿菌などの化膿菌がある。
例:膿瘍など、「膿」が付くもの
化膿性炎は以下の4つに分けられる。
例:膿胸、子宮膿腫
例:瘭疽、面疔、急性虫垂炎
例:歯槽膿漏、膿性鼻カタル
赤血球の滲出が起こる炎症。
例:「出血性」が付くもの、劇症肝炎、インフルエンザ肺炎
腐敗菌により腐敗(壊疽)がみられる炎症。
例:「壊疽」が付くもの。
組織の増殖が特に強く現れる炎症。肉芽組織が増殖する。
例:肝硬変、珪肺症
特異性肉芽腫を形成する炎症。肉芽腫性炎ともいう。
特異性肉芽腫とは、肉芽組織の増殖過程において、病原体や抗原抗体反応の影響により独特の性状を持った肉芽組織をいう。
肉芽腫性炎を起こす代表的な疾患には次のものがある。
結核菌の感染により起こる。結核症では、結核結節という肉芽腫がみられる。
一次結核症では初期感染巣がみられ、二次結核症では粟粒結核がみられる。
結核結節の構造は次の3つに分けられる。
☆顕微鏡で見ると乾いたチーズのように見える。
梅毒トレポネーマの感染によって起こる。梅毒は、ゴム腫という肉芽腫がみられる。
癩菌の感染によって起こる。癩結節と呼ばれる肉芽腫を形成する。
原因不明の疾患。結核結節に似た肉芽腫をつくる。乾酪変性はみられない。
クローン病、膠原病(関節リウマチ・リウマチ熱)、腸チフス、真菌症などがある。
炎症の局所症状には次の5つがあり、炎症の5大徴候という。