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第8編 免疫異常

第1章 免疫

免疫とは、自己と非自己を認識し、非自己を排除する反応である。

自己とは生体の正常な細胞を指し、非自己とはそれ以外のもの、すなわち異物を指す。

免疫反応を起こすには、抗原と抗体の関与が重要であるため、抗原抗体反応ともいわれる。

第1節 抗原と抗体

免疫反応は、抗体が抗原に反応することで起こる。抗原と抗体の働きは次のとおり。

1 抗原

抗原とは、免疫反応を引き起こす物質のことである。抗原は細胞や物質の表面にある蛋白質や脂質を指す。

自己の細胞には同じ種類の抗原がある(HLA抗原)。自己の白血球は、この抗原を持つ細胞を自己と認識し、攻撃(免疫反応)をしない。

しかし、他の種類の抗原を発見すると、異物(非自己)として認識し、排除する。

2 抗体

抗体とは、特定の抗原に対して特異的に反応する物質のことである。

抗体が抗原に結合することで以下のような反応を起こす。

①抗原に対する白血球の食作用を促進させる(白血球を抗原に呼び寄せる)。

②ウイルスの感染力を失わせる。

3 特異性

特異性とは、抗体が特定の抗原としか反応しない性質のことである。

抗体は1種類の抗原としか結合できないようになっており、「鍵と鍵穴の関係」と例えることができる(ホルモンと受容体との関係と同様である)。

予防接種において、1種類のワクチンが1つの感染症にしか効果がないのはこのためである。

4 免疫グロブリン

免疫グロブリンとは、γグロブリンのことであり、抗体のことである。

  1. 種類
    1. IgG:血液中で最も量の多い抗体。胎盤を通して母体から胎児の血液中に入り、抵抗力の弱い乳児を守るはたらきがある。
    2. IgA:母親の初乳、消化器や気道の粘膜の粘液中に含まれる。細菌・ウイルスへの感染防御作用を持つ。
    3. IgM:最も大きい抗体で、マクログロブリンとも呼ばれる。病原体の感染に対して、最初に現れる。
    4. IgD:骨髄腫の患者から発見された。IgMとともに、感染の初期に現れる。
    5. IgE:強力な細胞障害作用を持ち、アレルギー(Ⅰ型)を起こす抗体。肥満細胞や好塩基球と結合し、抗原に反応するとヒスタミンが放出され、種々の症状を引き起こす。
  2. 抗原の記憶

    IgMとIgDは、抗原の記憶に関与する。病原体の感染により、これらの抗体が産生される。

    病原体を排除した後、一部のBリンパ球の表面にIgMとDが残り(感作リンパ球)、同じ病原体が再び生体内に入ると感作リンパ球が抗原に反応し、即座に病原体を排除する。

第2節 免疫担当細胞の種類と役割

免疫担当細胞は、主に白血球である。

白血球は担当する免疫反応により次のように分類される。

1 抗原提示細胞

抗原の提示とは、抗原を捕らえ、その情報をリンパ球に伝えることである。抗原提示細胞には次のものがある。

①マクロファージ:抗原や免疫複合体を貪食し、抗原情報を他の免疫細胞に伝える。

②樹状細胞:脾臓やリンパ節に多く存在する。流れてくる抗原を捕え、リンパ球にその情報を提示する。貪食機能も有する。

★好中球は異物を貪食するが、抗原を提示しない。

2 抗原排除細胞

抗原の排除とは、抗原を持つ異物を排除することである。抗原排除細胞には以下のものがある。

  1. 貪食細胞(遊走細胞)

    好中球とマクロファージがある。異物を発見すると近づいて(遊走)、異物を飲み込む(貪食)。

  2. T細胞(Tリンパ球)

    胸腺を通過して成熟・分化したリンパ球を指す。T細胞には次のものがある。

    ①ヘルパーT細胞:免疫反応を促進させる。具体的にはBリンパ球の分化・成熟を促進し、細胞性免疫に関わるTリンパ球の働きを盛んにするなどである。

    ②サプレッサーT細胞:免疫反応を抑制し、免疫反応を終わらせる。

    ③細胞障害性T細胞(キラーT細胞):リンフォカインを放出して、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞を破壊する。また、抗原を記憶することができる。

    ④遅延反応T細胞:マクロファージを活性化させる。接触性皮膚炎や拒絶反応など、遅延型(Ⅳ型)アレルギーを起こす。

    ⑤ナチュラルキラー細胞(NK細胞):腫瘍細胞などを破壊する。抗原刺激を受けなくても標的細胞を破壊することができる(自然免疫)。

    ★抗原(異物)の破壊:腫瘍細胞やウイルス感染細胞に対して、アポトーシス(細胞の自己死)を誘発させる。これがキラー=殺し屋の由来である。

  3. B細胞(Bリンパ球)

    抗体を産生するリンパ球。骨髄でつくられる。

    抗原が侵入すると組織内に遊走し、形質細胞(プラズマ細胞)となり、免疫グロブリンを大量に産生する。抗原を記憶することができる。

  4. 免疫寛容

    骨髓で産生されたTリンパ球は、胸腺を通過することで分化・成熟する。この時、自己の細胞に反応するものを排除している。これを免疫寛容という。

    免疫寛容を起こすのは、Tリンパ球だけである。

3 その他の免疫物質

サイトカインは、免疫担当細胞間の情報伝達や活性化作用を持つ物質である。リンパ球・マクロファージなどから放出される。

このうち、リンパ球から放出されるものをリンフォカインという。これにはさらに、インターロイキン・インターフェロンなどがある。

第3節 免疫の分類

免疫を分類すると以下のような分け方になる。

1 自然免疫と獲得免疫

免疫獲得の時期、抗体の関与によって分ける。

  1. 自然免疫

    先天的に備わっている免疫をいう。

    これには好中球・マクロファージ・NK細胞のほか、補体・CRPが関与する。

    自然免疫は抗原が関与せずに、自己と非自己の識別ができる。したがって抗体は関与しない。

  2. 獲得免疫

    病原体の感染などにより、後天的に獲得した免疫をいう。

    これにはT細胞・B細胞が関与する。

    病原体の感染により抗体が産生されるため、抗体が関与する。

    ★受動免疫と能動免疫:獲得免疫の分類。受動免疫とは他の個体によってつくられた抗体を投与して獲得した免疫で、血清療法がある。能動免疫は病原体の成分を人工的に投与し抗体を獲得する免疫で、予防接種がある。

2 液性免疫と細胞性免疫

免疫反応に関与する細胞または物質によって分ける。

  1. 液性免疫

    液体成分が関与する免疫。抗体、補体、Bリンパ球がある。

    ★Bリンパ球は抗体を産生するため、液性免疫に分類する。

  2. 細胞性免疫

    細胞、つまり白血球が関与する免疫。Tリンパ球、NK細胞、マクロファージがある。

第2章 免疫反応の異常

第1節 アレルギー

アレルギーとは、免疫反応が過剰な状態である。

アレルギーはさまざまな機序で起こり、Ⅰ型からⅤ型までの5種類に分類される。

1 Ⅰ型アレルギー(アナフィラキシー型)

花粉症や猫アレルギーなど、一般的によく見られるアレルギーである。IgEが関与する。

①機序:食品・花粉などが抗原となり、肥満細胞や好塩基球にあるIgEが反応する。IgEによって大量のヒスタミンが放出されると、毛細血管透過性亢進・腺細胞の分泌機能亢進が起こり、粘膜の浮腫や粘液の分泌亢進を起こす(花粉症による鼻水や、食物アレルギーによる発疹など)。

②原因疾患:気管支喘息、じんま疹、花粉症、アトピー性皮膚炎、食事性アレルギー、ペニシリンショック

★Ⅰ型=一般的なアレルギーとショック

2 Ⅱ型アレルギー(細胞障害型)

自己の細胞自身が抗原と認識されて、貪食細胞に破壊されるもの。IgG・IgMが関与する。

①機序:何らかの機序で、自己の細胞に反応する抗体が産生され、マクロファージなどに貪食される。

②原因疾患:橋本病、重症筋無力症、グッドパスチャー病、免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少症、無顆粒球症

★Ⅱ型=自己の細胞が破壊される。橋本病は甲状腺の破壊、重症筋無力症はアセチルコリン受容体の破壊。

3 Ⅲ型アレルギー(免疫複合体型)

免疫複合体(抗原と抗体が結合したもの)に補体が結合し、周囲の組織に沈着することで組織が障害されるもの。IgG・IgA・IgMなどが関与する。

①機序:ある抗原に対して、抗体が結合して免疫複合体になると、それが周囲の組織に沈着する。免疫複合体によって好中球が集められ、蛋白分解酵素が放出されることで組織が破壊される。

②原因疾患:急性糸球体腎炎、膠原病(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス)、血清病

★Ⅲ型=免疫複合体ができる疾患。急性糸球体腎炎は溶連菌感染によりできた免疫複合体が、糸球体に沈着する。関節リウマチは、リウマトイド因子が免疫複合体となり、関節などに沈着する。

4 Ⅳ型アレルギー(細胞免疫型)

抗原に触れたT細胞が反応し、マクロファージや白血球などを活性化させて起こるもの=細胞性免疫。

①機序:遅延反応T細胞が抗原に反応し、マクロファージやキラーT細胞が標的細胞を破壊する。この反応は12時間以上かかるため、遅延型アレルギーとも呼ばれる。

②原因疾患:結核症、ハンセン病、真菌症、接触性皮膚炎(銀杏や漆によるかぶれ)、移植の時の拒絶反応、ツベルクリン反応

★細胞性免疫を起こす=抗体は関与しない。

5 Ⅴ型アレルギー(刺激型、機能亢進型)

反応の機序はⅡ型に分類されるが、抗原の機能を亢進させてしまう特殊な反応である。

これには、バセドウ病がある。

第2節 免疫不全

免疫不全とは、免疫担当細胞や関係臓器の機能が障害され、免疫能力が減退または消失した状態をいう。

これには、先天性と後天性の免疫不全がある。

1 先天性免疫不全

遺伝性のものが多い。

原因疾患には、ブルトン型無ガンマグロブリン血症、ディジョージ症候群、スイス型無γグロブリン血症がある。

2 後天性免疫不全

①免疫系臓器(骨髄やリンパ節)の疾患:慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、ホジキン病

②医原性(疾病の治療の副作用):免疫抑制剤、抗癌剤、ステロイド、放射線

③感染症:エイズ(後天性免疫不全症候群、AIDS)

④その他:腎不全、栄養障害(特に蛋白質の不足)、癌末期・老化

第3節 自己免疫疾患

自己免疫疾患とは、自己の組織に対する抗体がつくられる疾患である。

原因疾患には、橋本病、重症筋無力症、自己免疫性溶血性貧血、膠原病(関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなど)、バセドウ病、アジソン病、シェーグレン症候群などがある。

第3章 要点の確認

第1節 免疫

1 概要

免疫の定義 自己と非自己を認識し、非自己を排除する反応

  1. 抗原

    定義 免疫反応を引き起こす物質。

    成分 異物表面のタンパク質や脂質

  2. 抗体

    定義 特定の抗原に反応する物質

    作用 抗原に白血球を呼び寄せ、ウイルスの感染力を失わせる

    特異性 抗体が特定の抗原としか反応しない性質

    別名 免疫・γグロブリン

    IgE Ⅰ型アレルギー

第2節 免疫担当細胞

抗原の貪食 マクロファージ、好中球

大食細胞 マクロファージ

小食細胞 好中球

抗原の提示 マクロファージ、樹状細胞

免疫反応の促進 ヘルパーT

免疫反応の抑制 サプレッサーT

細胞傷害性T キラーT

ウイルス感染細胞・腫瘍の破壊 キラーT、NK

Ⅳ型アレルギー 遅延反応T

NK ナチュラルキラー

形質細胞 B細胞

抗体の産生 B細胞

抗原の記憶 キラーT、B細胞

胸腺で成熟 T細胞

自己の細胞に反応するTリンパ球を排除 免疫寛容

サイトカイン 白血球間の情報伝達

第3節 免疫の分類

自然免疫 先天的に備わっている免疫

獲得免疫 病原体の感染により抗体を獲得した免疫

獲得免疫担当細胞 NK細胞以外のリンパ球

液性免疫 抗体が関わる免疫

★液性免疫以外が細胞性免疫

第4節 免疫反応の異常

1 アレルギー

Ⅰ型 別名 アナフィラキシー型

疾患 一般的なアレルギー、ショック

Ⅱ型 別名 細胞障害型

疾患 橋本病、重症筋無力症

Ⅲ型 別名 免疫複合体型

疾患 急性糸球体腎炎、膠原病

Ⅳ型 別名 細胞免疫型・遅延型

疾患 結核(ツベルクリン)、ハンセン病、真菌症、接触性皮膚炎、拒絶反応

Ⅴ型 別名 機能亢進型

疾患 バセドウ病

2 免疫不全の原因疾患

免疫系臓器疾患 白血病、ホジキン病(悪性リンパ腫)、多発性骨髄腫

医原性 免疫抑制剤、抗癌剤、ステロイド、

放射線

感染症 エイズ(後天性免疫不全症候群、

AIDS)

その他 腎不全、飢餓、癌末期

3 自己免疫疾患

Ⅱ型 橋本病、重症筋無力症

Ⅲ型 膠原病(関節リウマチ、

全身性エリテマトーデス)

Ⅴ型 バセドウ病

その他 アジソン病、シェーグレン症候群

★Ⅰ型とⅣ型アレルギーにはない。