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第2章 健康

1 健康の概要

1)健康をどう考えるか

  1. 病気の反対の概念としての健康
  2. 生活概念としての理想的健康像(1946年、WHO)

    「健康は身体的にも精神的にも社会的にも完全に良好な状態をいい、単に病気がないとか病弱でないということではない。到達し得る最高の健康水準を享受することは、万人の基本的権利であり、人種・宗教・政治的信条・社会経済条件のいかんを問わない事項である。それぞれの人間集団が健康であることは、平和と安寧を得る上で不可欠のことがらであり、このためには個人も国もお互いに十分協力しなければならない。」

  3. 環境適応能あるいは体力としての健康
  4. 自己実現の手段としての健康
  5. 自覚的健康と客観的健康
  6. 身体障害者の健康

    WHO、2001年、国際生活機能分類を採択、加盟国に勧告

2)病気と健康-その連続性

(1)病気と疾病

(2)疾病の自然史

(3)疾病の予防(包括保健の概念)

疾病の予防、治療からリハビリテーションを併せた予防医学を総合して包括保健あるいは総合的保健という。

ア 第一次予防(健康増進・特異的予防)

まだ病気でない時期に病気にかからないようにすること。(環境改善・健康増進・予防接種など)

  1. 健康増進

    生活環境の改善・適切な食生活・運動や活動の励行・適正飲酒・禁煙・ストレス解消

  2. 特異的予防(特定の何かに対して予防)

    予防接種・事故防止・職業病対策・公害防止対策

イ 第二次予防(早期発見)

既に発生している疾病をより早期に発見し対策をたてること

  1. 早期発見

     健康診断・各種検診・人間ドック

  2. 早期治療
ウ 第三次予防(機能低下防止、治療及びリハビリテーション)

適切な治療・傷病進行阻止・リハビリテーション・理学療法・作業療法・言語療法・機能回復訓練・日常生活動作訓練・視能訓練・介護予防・職業訓練・適正配置

2 健康管理

1)健康管理

(1)健康管理の構成

(2)集団検診スクリーニング検査)

集団検診を行うための条件:1.公衆衛生行政上重要である 2.テストの診断精度が高い 3.当該疾患の罹患率・死亡率が高い 4.早期発見の効果があること 5.費用対効果のバランスがとれていることなどが挙げられる。

ア スクリーニング検査のカテゴリー
  1. 真陽性(検査陽性・疾病あり)
  2. 真陰性(検査陰性・疾病なし)
  3. 偽陽性(検査陽性・疾病なし)
  4. 偽陰性(検査陰性・疾病あり)
イ 敏感度と特異度
  1. 敏感度:異常者を正しく異常と判定する率

    真陽性÷(真陽性+偽陰性)

  2. 特異度:正常者を正しく正常と判断する率

    真陰性÷(真陰性+偽陽性)

2)健康増進

(1)運動・活動

運動・活動は代謝をスムーズにし、血清コレステロールのうちHDLCを高め動脈硬化を防ぐよう作用する。

(2)休養とストレス解消

休憩をはさむことで一連続作業時間を適切に設定をする。

(3)飲酒

長期大量飲酒は脂肪肝・肝硬変・糖尿病など、妊婦の飲酒は早産・流産などのリスクがある。

(4)喫煙

日本の成人男性喫煙率は昭和41年に83.7%と最高であり、 その後徐々に減少、平成29年のデータは28.2%、 女性は9.0%である。

我が国の男性喫煙率は低下傾向にあるが、 諸外国と比較するとまだ高率である。 一方、女性は、諸外国と比較すると低率ではあるが、 傾向としては横ばいである。

たばこの煙には、 その吸い口からの主流煙とたばこが燃えている部分から 直接空気中に立ちのぼる副流煙とがある。

たばこの煙は窒素・酸素・水素・二酸化炭素・一酸化炭素、 その他の気体成分と煙の粒子状成分とに分けられる。 重量では気体成分が92%、粒子状成分が8%程度である。

喫煙継続の主原因はニコチン依存で、 喫煙は肺癌・咽頭癌・喉頭癌・食道癌・狭心症・心筋梗塞などの 危険因子となる。

(5)ソーシャル・ネットワーク=対人関係網

独身者より配偶者のある者、多くの友人・知人を有する者、趣味の会・同好会・組織に入っている者は疾病罹患率や死亡率が低い。ソーシャル・ネットワークの多い者はより健康に生きられる。

3)衛生行政

(1)保健所の機構

ア 保健所の数

平成6年の地域保健法制定以降、保健所の集約化が進み、 平成6年3月に848か所あったものが、 平成30年4月現在で 469か所に減少した。

一方、市町村保健センターは地域における母子保健・老人保健の拠点として整備され、 平成29年4月現在、2456か所まで増加した。

イ 保健所の業務
  1. 地域保健に関する思想の普及と向上に関する事項
  2. 人口動態統計その他地域保健に係る統計に関する事項
  3. 栄養の改善と食品衛生に関する事項
  4. 住宅、水道、下水道、廃棄物の処理、清掃その他の環境衛生に関する事項
  5. 医事と薬事に関する事項
  6. 保健師に関する事項
  7. 公共医療事業の向上と増進に関する事項
  8. 母性、乳幼児、老人の保健に関する事項
  9. 歯科保健に関する事項
  10. 精神保健に関する事項
  11. 治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病により長期に療養を必要とする者の保健に関する事項
  12. エイズ、結核、性病、伝染病その他の疾病の予防に関する事項
  13. 衛生上の試験と検査に関する事項
  14. その他地域住民の健康の保持と増進に関する事項

(2)市町村の役割

予防接種法による予防接種、母子保健法による母子健康手帳の交付、地域保健法による市町村保健センターの設置、廃棄物の処理及び清掃に関する法律による一般廃棄物の処理などは市町村の役割である。また、市町村には、母子健康センターや老人福祉センターなども設置されている。

(3)関連機関の役割

各都道府県には、精神保健福祉法に基づき、精神保健福祉センターが設置されている。

(4)保健・医療・環境関係の法律

ア 保健予防関係

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律・予防接種法・検疫法・母子保健法・母体保護法・健康増進法・地域保健法・精神保健福祉法など

イ 環境衛生関係

食品衛生法・容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律・水道法・下水道法・環境基本法・理容師法・公衆浴場法など

ウ 医事関係

あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律・医師法・歯科医師法・臓器の移植に関する法律など

エ 薬事関係

薬事法・薬剤師法など

オ 社会福祉関係

児童福祉法・身体障害者福祉法・知的障害者福祉法・老人福祉法・生活保護法・母子及び寡婦福祉法など

カ その他

健康保険法・労働基準法・労働者災害補償保険法・国民健康保険法・学校保健法・労働安全衛生法など

4)医療制度と医療保障

(1)保健医療の専門職者

医療従事者で多い順に列記(H28)
  1. 看護士・准看護士 147万
  2. 医師 32万
  3. 薬剤師 30万
  4. その他、歯科衛生士12万4千、あん摩マッサージ指圧師11万6千、はり師11万6千、きゅう師11万4千、歯科医師、柔道整復師、保健師、助産師、歯科技工士と続く。

(2)医療施設とその連携

医療施設の分類
  1. 病院 病床数20以上
  2. 診療所 19以下
機能上の分類
  1. 第一次医療 プライマリ・メディカルケア 小学校区程度の領域
  2. 第二次医療 より専門化した医療 高等学校区程度の領域
  3. 第三次医療 さらに高度な診療 都道府県全域
医療圏:地域の実情に応じた医療を提供する体制を確保するために 都道府県が設定する地域単位
  1. 一次医療圏 市町村
  2. 二次医療圏 複数の市町村
  3. 三次医療圏 都道府県
ア プライマリ・メディカルケア
  1. 第一次医療・初期医療とも呼ばれる。
  2. 担当医は、家庭医、ホーム・ドクターと呼ばれる。
  3. 平日診療の他、休日診療・夜間診療・往診などの患者に寄り添った診療行為が求めらる。
  4. 救急医療も含まれる。
イ ターミナル・ケア
  1. 終末医療・末期医療・緩和医療とも呼ばれる。
  2. 末期癌患者などの余命宣告を受けた患者を対象
  3. 患者のQOLの向上や痛みの緩和を目的とする。
  4. 延命治療や病状回復を期待する積極的な診療はしない。
  5. 施設はホスピスと呼ばれる。
  6. 包括保健には含まれない。

(3)医療保障

公費負担医療と医療保険がある。

ア 公費負担医療

医療費の全額もしくは大部分を公的管理された基金が負担する医療制度

  1. 全額公費負担医療
  2. その他の公費負担医療

    感染症法による結核医療・結核入院医療、精神保健福祉法による措置入院、原爆被爆者援護法による原爆認定医療・原爆一般医療、障害者総合支援法による自立支援医療、厚生労働省指定の特定疾患、母子保健法による養育医療などがある。

イ 医療保険
  1. 被用者保険
    1. 全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)

      健康保険組合を持たない企業の従業員で構成される。全国健康保険協会が運営している。

    2. 組合管掌健康保険(組合健保)

      企業や企業グループ(単一組合)、同種同業の企業(総合組合)、一部の地方自治体(都市健保)で構成される健康保険組合が運営している。

    3. 船員保険

      船舶の船員。全国健康保険協会(船員保険部)が運営している。

    4. 共済組合

      国家・地方公務員、一部の独立行政法人職員、日本郵政グループ社員、私立学校教職員。公的年金制度や他の福利厚生制度も併せ持っている。

  2. 国民健康保険

    国民健康保険の保険者は従来は市町村であったが、平成30年4月から都道府県と市町村が保険者となって運営することになった。国民健康保険は地域保険に属し、日本で最も加入者数が多い保険である。

  3. 後期高齢者医療制度

    75歳以上の者と後期高齢者医療広域連合が認定した65歳以上の障害者を対象とする医療保険制度で、平成20年に開始された。保険者は各都道府県ごとの全市町村で構成される後期高齢者医療広域連合であり、患者の自己負担率は通常1割であるが、現役並み所得者は3割負担となる。

(4)国民医療費

平成27年度の国民医療費は42兆円強、前年度比3.8%増、国民所得に対する比率も11%弱となり、国内総生産に対する比率は8%弱となった。また、一人当たりの国民医療費は約33万円となった。人口の27%を占める65歳以上が国民医療費の59.3%を消費している。

(5)保健活動と医療の倫理

ア 保健医療の専門家と患者との関係

日本の伝統は、弱者である患者が強者である医師に保護される関係(父権主義・温情主義=パターナリズム)である。しかし、近代社会では両者の関係は契約関係とされている。保健医療にあっては、専門家から患者に病状や行為についての説明がよくなされた上で患者が納得・合意・承諾することが必要で、これをインフォームド・コンセントと呼ぶ。また、慢性疾患の場合、患者の生活の質(QOL)を高める努力が特に医師の側に重要である。

イ 医療過誤
ウ 診療内容と医療費
エ 終末期医療・脳死・臓器移植

古くから人の死は心臓と呼吸の停止及び瞳孔散大の3つの徴候によって専門家にも通俗的にも死であると考えられてきた。ところが、脳波上の死がここに登場し、本人の意志が確認できれば、脳死状態の時期に必要とされる心臓・腎臓などの臓器を取り出し、他人に移植することが可能となった。さらに、平成21年には、臓器の移植に関する法律が改正され、親族に対し臓器を優先的に提供する意思を書面により表示することもできることとなり、本人の臓器提供の意思が不明な場合にも家族の承諾があれば臓器提供をすることが可能となったため、法改正前は不可能とされていた15歳未満の者からの脳死状態での臓器提供も可能になった。

オ 保健活動と倫理問題

5)我が国の保健医療分野の国際協力

(1)WHO(世界保健機関

WHOは、人間の健康を基本的人権の一つとして捉え、その達成を目的として設立された国際連合の専門機関で本部はスイスのジュネーブにある。 伝染病対策、衛生統計、基準づくり、技術協力、研究開発など保健分野の広範な活動を実施している。

(2)ODA(政府開発援助)

政府開発援助とは、発展途上国の経済発展や福祉の向上のために先進工業国の政府及び政府機関が発展途上国に対して行う援助や出資のことである。DAC(開発援助委員会)諸国による実施状況を純額ベースでみると、長らくアメリカが世界1位であったが、1989年に日本がアメリカを追い抜き、その後、日本が世界最大の援助国となった時期もある。

(3)JICA(国際協力機構

事業内容は多岐に及ぶが、その基本は「人を通じた国際協力」である。また、資金協力には、有償資金協力と無償資金協力があり、無償資金協力は二国間贈与に基づいて行われるため、開発途上国に資金についての返済は求めない。

(4)NGO(非政府組織)

国際協力に携わる非政府組織、民間団体のことを指し、民間自発団体とも呼ばれる。