昔から、ある種の病気は、ある人々の間に、あるいは、ある時期に流行することが気づかれていた。
これらの歴史上の病気の流行に関する記載こそ疫学の原点である。
ラストは、疫学は医学のうち「ある人間集団にみられる病気などの分布、原因および対策を取り扱う分野である」と述べた。
パーキンは、疫学は「病気の流行現象を扱う分野である」と述べている。
疫学は、次に示す意義・特徴を有する。
ある時期やある集団に病気が多発しているかどうかを知るには、病気を判定して数えること、そしてそれを率にして比較しなければならない。
例えば、ある一年間に保健所に届け出のあった新たに発生した結核患者が6万人、日本の人口が1億2千万人とすれば、人口10万人対罹患率は50
例えば、ある町で高血圧検診を実施し、受診者2000人のうち高血圧者が200人であった場合、この町における検診実施時の高血圧有病率は10%
場所別に、どこにその病気が流行しているかをはっきりさせる。性行為感染症やエイズについては一人ひとりの性的パートナーとその関係を追跡して、感染経路を明らかにすることもできる。
病気が起こる原因と機序は複雑である。インフルエンザウイルスとインフルエンザの発症のように1対1に対応する場合もある。この場合は病因としては単純である。しかし、ウイルスが侵入して体内で増殖し症状を発するまでの過程は個人によって様々であり、何が症状の重い軽いを決めるのか(宿主要因)はよくわかっていない。疫学研究における因果関係の判定に関わる9つの判定基準を以下に示す。前半の5つは米国公衆衛生局長諮問委員会が喫煙が肺癌の発生要因とした判断基準であり、後半の4つは統計学者が翌年に追加したものである。
既に発症している者と対照者について、要因に暴露された者の割合を比較する方法。
過去にさかのぼって調べるので、後向き調査・ケースコントロール研究・患者対照研究・結果対照研究とも呼ばれる。
コホートとは300人程度の古代ローマの軍隊の呼称。
このような集団を設定して、たとえば集団の喫煙者と非喫煙者を記録しておき、以後数年間追跡し、2つの集団から何人の肺癌患者が発生したかを数え、比率を求めて比較し、喫煙者に発生率が異常に高いことを証明する方法である。
集団を設定して将来に向けて追跡するので、前向き調査・追跡調査・要因対照研究とも呼ばれる。
ランダムに被験者群を処置群(新薬を投与した群)と比較対照群(既存の治療薬群およびプラシーボ群)に区分し、効果を測定する。
現在最も一般的に用いられている薬剤・治療の効果証明方法で、根拠のレベルが極めて高い臨床疫学である。
観察集団に対して、原因と考えられる物を人為的に加減し、結果の発生率を調べる実験疫学である。
生物の事象を、自然界で生活している生物集団について、その環境や他の生物との関係などを中心に研究することである。
相対危険は、危険因子に曝露した群の罹患リスクの、曝露していない群の罹患リスクに対する比で示される。
すなわち、「危険因子に曝露した場合、それに曝露しなかった場合に比べて何倍疾病に罹りやすくなるか(疾病罹患と危険因子曝露との関連の強さ)」を示す。
例)喫煙(要因)と肺がん(罹患)の調査結果から相対危険度を算出する。( )内は実数。
要因
(喫煙) 罹患(肺がん) 計
あり なし
曝露群 A(80) B(40) A+B(120)
非曝露群 C(20) D(120) C+D(140)
架空の数字ではあるが、これは喫煙する群が非喫煙群に比べ肺がんになるリスクが4.67倍であることを示す。
寄与危険
寄与危険は、危険因子曝露群の罹患リスクと非曝露群の罹患リスクとの差で示される(表1)。 リスク差ともいう。
すなわち、「危険因子の曝露によって罹患リスクがどれだけ増えたか」「危険因子に曝露されなければ罹患リスクがどれだけ減少するか(危険因子が集団に与える影響の大きさ)」を示す。公衆衛生対策で重要な指標であり、もしその要因が除去されたらどれだけ疾病を予防できるかを意味している。
寄与危険割合
寄与危険割合は、寄与危険が曝露群の罹患リスクに占める割合を示す。すなわち、「危険因子曝露群のなかで発症(罹患)したもののうち、真に曝露が影響して罹患した者は何%であるか」を示す。
例)喫煙(要因)と肺がん(罹患)の調査結果から寄与危険と寄与危険割合を算出する。
表2
要因
(喫煙) 罹 患(肺がん) 計
あり なし
曝露群 A(80) B(40) A+B(120)
非曝露群 C(20) D(120) C+D(140)
この例から考えると、喫煙者を禁煙させることによって、100名のうち52名は肺がんを予防できると考えられるほか、 この例では、喫煙者で肺がんの者のうち78.6%が喫煙によって肺がんになったと考えられる。
人口寄与危険度とは疫学における指標の1つであり、「集団寄与危険度」とも呼ばれ、集団全体と非暴露群における疾病の頻度の差。集団全体の発生率から非暴露群の発生率を引いたものであり、人口集団における暴露効果の影響の強さを示すことが出来る。