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第12章 保健統計
1 保健統計の意義
保健統計は、衛生統計・厚生統計とも呼ばれ、
地域・国・世界の人々の健康・疾病・ヘルスサービスに関連する
事象を示す統計である。
- 人口統計
国勢調査・人口動態統計など
- 疾病統計
国民生活基礎調査・患者調査・感染症発生動向調査・食中毒統計など
- 医療統計
医療施設調査・受療行動調査など
- 生活環境・栄養・保健活動など
国民栄養調査・学校保健統計調査など
2 おもな保健統計とその意義
1)人口統計
- 人口静態統計
人口静態統計調査の代表例は国勢調査である。
- 1920年以降、第2次世界大戦終戦時の混乱時を除き、5年ごと(西暦末尾0と5の年の10月1日)に実施
- 人口・性・年齢・配偶関係・就業などを世帯単位に調べる全数調査
- 外国人も含め、日本に在住しているすべての人が対象
- 総務省統計局が担当
- 現在では、インターネットによる回答も可能
- 人口動態統計
- 市区町村への出生・死亡、結婚・離婚、人口移動などの届け出
- 市区町村から保健所・都道府県衛生部・厚生労働省大臣官房統計部へ集計
2)疾病統計およびその他の保健統計
- 国民生活基礎調査
- 国民の保健・医療・福祉・年金・所得など、国民生活の基礎的な事項を世帯面から総合的に把握する調査
- 昭和61年に最初の大規模調査が実施
- 担当は厚生労働省
- 対象は無作為抽出された全国の世帯並びに世帯員
- 有訴者率・通院状況・健康診断の受診状況などを知ることができる。
- 患者調査
- 全国の医療施設を利用する患者の傷病などの状況を把握する
- 昭和28年から標本調査の方法により実施
- 昭和59年からは3年に1度の実施
- 分母は人口
- 平成29年の外来受療率で最も多いのは循環器系疾患の高血圧性疾患
- 系統別では消化器系疾患
- 入院で最も多いのは、精神及び行動の障害
- 国民健康・栄養調査
- 国民の身体の状況・栄養摂取量および生活習慣の状況を明らかにする
- 国民の健康増進の総合的な推進を図るための基礎資料
- 無作為抽出した世帯員を対象
- 毎年11月に実施
- 調査項目は、身長・体重・腹囲・血圧・血液検査・歩数・問診(服薬状況・運動)などの身体状況、食品摂取量・食事状況(欠食・外食など)などの栄養摂取状況調査、身体活動・運動・休養(睡眠)・飲酒・喫煙・歯の健康などに関する生活習慣調査
3 主要な保健統計指標
- 平成30年10月1日現在の日本の総人口は1億2644万人
- 昭和48年をピークとして出生率が低下
- 人口増加率も低下に転じ
- 平成17年は戦後初めて人口が前年を下回った。
- 日本の人口のピークは平成20年の1億2808万人
- その後は若干の減少傾向が続いている。
2)性・年齢別人口構成
- 昭和22年~24年(団塊世代)と昭和46年~49年の2度のベビーブーム
- 以後の出生数の減少傾向
- 日本の人口ピラミッドはつぼ型(ひょうたん型)
- 年少人口(0歳~14歳)と生産年齢人口(15歳~64歳)は減少
- 一方、老年人口(65歳以上)は増加し、28.1%に達した。
- 我が国の高齢化は西欧諸国と比較しても極めて急速に進んでいる
- 生産年齢人口が最も多く59.7%
- 日本の人口性比は女性100対男性94.8で女性が多く
- 出生数は必ず男児が女児より多い。
3)粗出生率
- 平成30年の日本の出生数は、91万8千人
- 出生率の最も基本的な指標は粗出生率で、人口千人当たりの1年間の出生数
- 日本の粗出生率は急激に低下
- 平成30年データでは7.4
4)年齢別出生率および合計特殊出生率
- 年齢別出生率
- 年齢別出生率はそれぞれの年齢の女性の出生率
- ある年齢の女性から産まれた出生数をその年齢の女子人口で割り、千倍した値
- 女子人口には、既婚・未婚の区別なくすべての女性
- 年齢別出生率は5歳階級ごとに示される
- 平成30年の5歳階級別出生率で最も高いのは30歳~34歳で102.0
- 合計特殊出生率
- 合計特殊出生率は、15歳~49歳(再生産年齢)の女性の年齢別出生率を合計した値を1人当たりで表した指標
- 一人の女性が一生に産む子供の平均数
- 死亡率が不変で、合計特殊出生率が高ければ、将来の人口は自然増
- 低ければ自然減を示す
- 仮に、調査対象における男女比が1対1で、すべての女性が出産可能年齢以上まで生きるとすると、合計特殊出生率が2であれば人口は横ばいを示し、これを上回れば自然増、下回れば自然減となるはずである。
- しかし、実際には生まれてくる子供の男女比は男性が若干高いことや出産可能年齢以下で死亡する女性がいることから、先進国においての自然増と自然減との境目は2.08程度であるとされている。
- 日本の合計特殊出生率は、平成30年データで1.42。
- 過去、最低の平成17年の1.26と比較すると、若干、回復している。
粗死亡率は人口千人当たりの1年間の死亡数で、粗出生率に対応する指標である。
日本の粗死亡率は近年は上昇しており、平成30年には11.0となっている。
- 乳児死亡率
- 生後1年未満の死亡を乳児死亡
- 通常、出生千対の乳児死亡率で観察
- 平成29年の日本の乳児死亡率は1.9
- 世界最低水準
- 新生児死亡率
乳児死亡の中で生後4週未満の死亡を新生児死亡といい、乳児死亡率と同じく出生千対で観察する。平成29年の日本の新生児死亡率は0.9、世界最低水準である。新生児死亡率は乳児死亡率や周産期死亡率とともに健康水準の指標となる。
- 周産期死亡率
- 妊娠満22週以後の死産と生後1週未満の早期新生児死亡を合わせたものを周産期死亡
- 出生数に妊娠満22週以後の死産数を加えた出産千対で観察
- 平成29年の日本の周産期死亡率は3.5
- 世界最低水準
- 妊産婦死亡率
平成29年の妊産婦死亡数は33人である。妊産婦死亡率は出産10万対で観察し、平成29年データは3.4、近年、世界有数の低い水準まで改善されている。
- 死産率
- 人口動態統計でいう死産は、死産の届出に関する規程に基づく
- 妊娠満12週以後の死児の出産
- 自然死産と人工死産に区分
- 死産率は、通常、出産(出生+死産)千対の率
- 平成29年データで、自然死産10.1、人工死産11.0
- 自然死産率が最低を示す女性の年齢は25~29歳
- 人工死産率が最低を示す女性の年齢は30~34歳
6)年齢別死亡率
年齢別死亡率は、通常、人口10万対で示す。
一般に年齢別死亡率は出生後から10歳ころまで低下し、その後は年齢とともに上昇する。
平成29年データの日本人の年齢別死因第1位は次のとおりである。
- 0歳~4歳 先天奇形・変形、染色体異常
- 5歳~9歳 悪性新生物
- 10歳~39歳 自殺
- 40歳~89歳 悪性新生物
- 90歳~94歳 心疾患
- 95歳~ 老衰
死亡率は年齢によって著しく異なるため、人口構成が粗死亡率に及ぼす影響は大きい。
すなわち、年齢別死亡率は10歳前後で最も低く、乳児や高齢者で高いので、人口千人当たりで表す粗死亡率は人口の高齢化とともに上昇する。
年齢調整死亡率は、こうした年齢構成を補正して算出する指標である。
年齢調整死亡率は人口構成が異なる集団の死亡水準の比較や時代とともに人口構成が変化する際の死亡水準の推移を検討するのに適している。
厚生労働省は平成2年からは基準人口に昭和60年モデル人口を使用している。
なお、悪性新生物の年齢調整死亡率は、胃癌は男女とも昭和40年代から大きく低下している。
大腸癌は男女とも昭和30年代から上昇したが、近年はほぼ横ばいとなっている。
肺癌は男女とも平成10年頃まで大きく上昇していたが、近年は微減傾向となっている。
しかし、昭和30年と比較すると、男性は5倍、女性は4倍となっている。
乳癌は昭和40年代から上昇傾向を示している。
子宮癌は低下傾向が続いていたが、近年はほぼ横ばいである。
食道癌は、男性では平成10年代からゆるやかな減少傾向、女性も減少傾向が続いていたが、近年は横ばいである。
死因別死亡率は、通常、人口10万対で示す。
日本の平成30年死亡総数は136万人、前年より増加(悪性新生物・心疾患・老衰・不慮の事故・誤嚥性肺炎・腎不全・血管性及び詳細不明の認知症が増加)しており、第1位の悪性新生物から第3位の老衰の死亡数の合計は全体の51%に達する。
- 第1位 悪性新生物
- 第2位 心疾患
- 第3位 老衰
- 第4位 脳血管疾患
- 第5位 肺炎
- 第6位 不慮の事故
- 第7位 誤嚥性肺炎
- 第8位 腎不全
- 第9位 血管性及び詳細不明の認知症
- )第10位 自殺
9)PMI
PMIは総死亡数に対する50歳以上死亡者数の割合を示すものであり、50歳以上の死亡者数を総死亡者数で割り、100倍したものである。
生命表は、生命関数と呼ばれる死亡率・生存数・死亡数・定常人口・平均余命が年齢ごとにどのような状況にあるかを示したものであり、人口構成などをまったく考慮する必要がなく、年齢別死亡率だけから求められるので、死亡の分析に極めて有用である。
また、X歳の生存者が平均してその後何年生きられるかを表した期待値をX歳の平均余命という。
0歳の平均余命を特に平均寿命という。
X歳の平均余命は、平均寿命-X歳より長い。
平成30年データの日本人の平均寿命は、男性81.25歳、女性87.32歳、女性は世界一の長寿である。
11)有訴者率
有訴者とは、在宅で病気やけがなどで自覚症状のあるものをいう。
日常的に就床の者は含まない。
有訴者率は、国民生活基礎調査によって把握され、
人口千人に対する有訴者数は、男性では「腰痛」が最も多く、
「肩こり」・「せきやたんが出る」・「鼻がつまる・鼻汁が出る」が続き、
女性では「肩こり」が最も多く、「腰痛」・「手足の関節が痛む」・「体がだるい」が続く。
12)受療率
受療率は患者調査により把握される。
受療率は人口10万対で示される。
致命率は、ある疾患に罹患した患者総数に対するその疾患での死亡数の割合を示すものである。
ある疾患による死亡数をその疾患の患者数で割り、それを100倍した数で算出される。